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そしてヘラ、カーブ型、抑えコテなど
 一昨年の2月の初めのころ、ラパンフェルトというフランスのウサギの帽子の素材と木型が、不思議な縁を巡りめぐって手元に落ちた。彫刻のようにくっきりとした起伏を持つその表面は光を受けて柔らかな綿毛の艶と深い陰影を湛えていた。diary photo
 憧れを持って眺めていたフランスの芸術を手元で、触って、木型に沿って伸ばして、すぼめて、ヘラで襞をつくり...夫はそのつくり方をネットで調べて研究してひとつ目を試作してみせてくれた。
 そしてヘラ、カーブ型、抑えコテなど、成型の工程に便利なジグを全部こしらえてくれた。それでもやっぱり力のいるところや釘打ちは補強してもらわないと私の手はうまくない...待つこと3日間、型から外してモデルを見ながら内側のリボンを縫い止めてゆく。culture of the 'good times' and the founder of a new era...そう評された帽子屋の心意気に少しは近づけますように。

2月10日
 クッキー、このシンプルな西洋菓子。スイーツブームの情報のおかげで、その味も概念も大いに広がってしまって、やや混沌としてきた。あるとき、粉とバターと砂糖のしみじみとした幸せを感じる味わいに出会って、これは特別の材料と秘法があるのではないかと敬遠していたが、なんとか自分で再現できないかしら? と試みる。とりわけ、いつ食べても飽きることのないプレーンクッキーを入門とした。diary photo
 砂糖とバターと粉の黄金比とされる1:2:3の分量を量って、無塩バターを練り、砂糖を少しずつ加えてまた練り、粉をふるい入れてヘラで掬うように包む。
 材料は新鮮さが命、冷たいうちに、艶よく練って、触り過ぎないようさっくりまとめて焼いた。単純なことほど、うまくいくまでには経験がモノを言うようだ。
 基本の薄力小麦粉だけであの味に近く焼けたので、次のステップは全粒粉とアーモンドパウダーを加えてみた。この後は、比率をあの感動のクッキーの食感に寸分違わぬよう、微調整に励むべし。

2月20日
 今から20年も前のことになるが、アメリカ製の古いシンガー工業用ミシンを手に入れた。それまで使っていた家庭用ミシンとは格段のスピード感が心地よく、白いシャツやパジャマをすいすいと縫っていた。いつも同じオーガニックコットンの高密度の織地を、綿糸の80番手で1、2ミリのステッチ幅で同じ仕様にして。diary photo
 新しいうちは洗ってアイロンをかけると、まるで紙のように表面は清楚で気持ちもパリッとして、そのうちすっかりこなれて、縫い目は布に埋れて一体感を持ってくるころ、着心地は最高に達する。これまで仕立てた型紙を保存するために、タイトルを見てパッと絵姿が思い浮かぶよう、1970年代伝説のフォークシンガーのイメージになぞらえた。
 #STEVE_GOODMANと名づけたワークウエアは、もとは初代パジャマの上部だった。同時代の南仏ソレイアードのプリント生地でポケットをつけたら名は体を表すがごとく、'City of New Orleans' のメロディが蘇って、たちまち70’s イメージモデルの存在感は強まる。