logo

びゅんと伸びた竹のアーチのように
 青竹のお箸の注文を託した堀さんより、青竹職人の仕事場から電話で「かごはどうしますか?」と尋ねてくだすった。有り難く。職人さんと直接対話することで、ライブ感があっていっそう盛り上がる。まずはかごの大きさを決めてもらった。diary photo
 持ち手は通常のより長くとって、かたちはつけないで、ひゅんとしなう竹のアーチのようにとり付けてくださいますか?と言ったら、笑いながら、はぁ、わかりましたと。注文の醍醐味は待ってるあいだの夢想に尽きる。
 届いて、開けてみて、この時期ならではの青の霊新たかなるかな。天然色はすぐに褪せてゆきます、との青竹しごとの話が実に面白い。削いだ竹の裏表が中心から放射状に広がりながら、節円で立ち上がって籠の高さとなる。途中で二股に割いてちょっと膨らみを持たせてまた窄めてある。それを縦軸に糸のように細い竹で編む、blue bamboo woven three stories というよりも織物みたい。緻密な細工の竹の表情が意表をつく。

2月10日
 どんよりとした曇に覆われる日々、外にちょっと出ただけでも凍える寒風。部屋に入れば、冬の間だけ、室内に咲く蘭の花やニームの木が窓辺に並ぶ。こんなときは天から光がさす場所、それを想像しただけでガラスの温室に恋いこがれる。
 まるで規模は違うけれど、英国のロンドン南西部にある王立のキュー・ガーデンズのおびただしい植物や種子の展示の幻想的な風景と、パリのテュイルリー公園に佇むオランジュリ、なかでも日がな一日いても飽きないクロード・モネの「睡蓮」をパノラマで眺められる展示場をのある建物は思い出すだに素晴らしい。diary photo
 温室にいると日常から遠く離れて、どこか別の世界に漂っているような不思議な感がある。原因はガラス越しの光を受けてみずみずしく輝き、鬱蒼と茂る枝葉の、まるでアンリ・ルソーの「夢」に描かれたジャングルのような遠近感の錯覚だ。食糧危機に備えるうえでも、やはり温室が必要かなと夢想する。

2月20日
 キーンと耳鳴りがしそうに凍える夜の外気温は零度。この時節は食堂の窓の左上あたりから、ちょうど夕食後に月が顔を出す。煌々としたあかりに、ただならぬ霊気を感じて外へ出れば、満月が雲のあい間をすべり抜けでて輝いていた。
 最近は皆既月食の折に耳にするブラッドムーンのほかにも、ネイティヴ・アメリカンの呼び名にはストロベリームーンとかピンクムーンなどといった親しみ深さがある。ちなみに今夜の満月はスノームーンと呼ばれるらしい。その名の通り雪のように冷たく白く、こちらは親しみ深さよりむしろ、厳かで近寄りがたい。diary photo
 空を見つめれば、深い青のかなたに吸い込まれてしまいそう。目を閉じてしばし漂う。めったに願いごとなどしないのに目を開けたら、ちょっとキメたいことありて閃き「この月曜日ムニャムニャムーン」と伝達すれば、月は冴え冴えとして。